逢瀬を重ね、君を愛す

今生の決断





「お前、バカだろ」


突然の声に振り返れば呆れた顔で清雅が柱にもたれていた。


「…清雅…いきなり乙女の部屋にこないでよ」

「どっかのバカ女がバカなことしたせいで、俺がお前の監視役になったんだよ、このバカ女!」


ガシッと頭を鷲掴みされれば、遠慮なく力を込めて掴んでくる。


「痛い痛い痛い!!!ごめんってば!!!」


宮中を抜け出し薫に助けてもらった後、帰宅した二人を待っていたのは笑顔の蛍と桜乃だった。


笑顔なのに背筋が凍るとはどういうことだろう。


「お前のせいで俺の仕事増えたんだからな。」

「じゃあ早く陰陽寮にかえればいいじゃん。」

「蛍さんが恐くて無理。」


別々にこってり絞られた後、私は桜乃によって3週間の軟禁状態。
そして毎日のようにやってくる清雅だけが話し相手だ。


「それに薫にも頼まれてるからな。」

「薫にも?」


しぶしぶ座布団を清雅の方へ投げると清雅は見事にキャッチし、床に敷く。


「そ。…あのさ、薫のこと諦めろって言ったけど。心配させろなんていってねえぞ」

「…ごめん」


考えがまとまらず飛び出したあの日。
その原因を作ったのはまさしく目の前にいる彼だ。
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