焼け木杭に火はつくか?

(3)

昨夜の酒など一滴たりとも残っていないというような、そんな実に清々しくさっぱりとした顔の英吾は、朝から元気に喋りまくりながら、英吾に負けじとすっきりとした顔の道代が作った朝ご飯をおかわりしていくほどしっかり食べて、意気揚々と会社へと向かった。

土曜日だから、英吾も仕事は休みだろうと決め込んでいた良太郎だったが、明け方近くの「今日は午後から、山の中にあるパン屋さんに取材しに行くんだ」という英吾の呑気な発言に目を剥いた。

「休みじゃないのかよ」
「仕事だよ。。土日しかやっていないパン屋さんなんだよ。お土産に何か買ってくるね」

へらりと笑いながらの飲み続けている英吾に「さっさと寝ろっ」と良太郎は声を張り上げ、夜を徹して続きそうだった家飲みの会を道代は解散させた。

そして、迎えた朝。

英吾を見送ろうと半分寝ている頭で一緒の食卓についた良太郎は、朝から見せつけられた英吾の旺盛な食欲に「お前は、化け物か」と、ぐったりとした声で呟いて、唖然とした面もちで英吾を見ていた。
良太郎はと言えば、疼くような鈍い痛みのある頭と、ずっしり感とムカムカ感を訴える胃に翻弄され、英語を見送った後は自室に籠もり、昼過ぎまでベットで冷凍マグロと化してながら、撃沈していた。
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