焼け木杭に火はつくか?

(6)

『Waoto』は、大正時代に建てられたと言られている小さな洋館を、極力その趣のある風情は残して改装したカフェだった。
カウンター席とテーブル席があり、併せて二十人ほどの客が入れる。
漆喰の白い内壁と、時代物の趣があるしっかりとした梁、ワックスが効きほどよく使い込まれた感のある木目調の床。
そのなにもかもが、ナチュラルでアンティークな雰囲気を醸し出していた。
店の前には細長い小さな花壇があり、一年中、何かしらの花が咲いていた。
春先にはチューリップやラナンキュロスなどが植えられていたが、今の季節咲いている花はロベリア、ベコニア、ペチュニアだった。
何かの折りに聡からそんな説明されたが、花の名を教えられてもどれがどれなのかは、良太郎には今もってさっぱり判らなかった。


-食べられるの?


真顔でそう尋ねた英吾は、聡に盛大に笑われていた。
その花壇の前には駐車スペースがあり、三台分の車が停められるようになっている。
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