焼け木杭に火はつくか?

(8)

「策士って言いましたけど、オイラ、なんも、企んでなんかいねーですよ。全部、単なる偶然ですって」
「偶然、ね」
「そうですよ」

聡の言葉など全く信じていないような口振りで笑う長谷に、聡は至って真面目な顔で頷いた。
「随分、都合のいい偶然だなあ」
「企んだことじゃねーですし。第一、そんな頭、オイラにゃありませんよ。だから、偶然としか言えませんがね」
「それを信じろと言われてもね」

長谷の言葉に少しだけ唇を尖らせて考え込んだ聡は、何かを思いついたのか、にこりと長谷に笑いかけた。

「なら、運命にしてきますよ」

飄々と、でも楽しそうな口振りでそう長谷の言葉に反論した聡は、「乾杯」と言って、オレンジジュースで割った黒ビールを飲み始めた。
そんな聡に「乾杯と言われてもなあ」と言いながら、自分の負けだと言うようにやや苦笑い気味の笑みを浮かべて、聡への追求を打ち切った。
それが何に対する乾杯なのかは、尋ねなかった。
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