女王様のため息

   *   *   *

普段通り、自分の部屋、自分のベッドで目覚めたけれど、背中から回された力強い腕のせいで身動きが取れない。

覆いかぶさるように司の体重を乗せられた私の体をどうにか動かして、後ろを向くと、すやすやと眠っている司の顔があった。

昔から女の子に人気があったと自分で自慢げに話す司の顔は、確かに整っている。

誰もが一斉に振り向くような華やかさはないけれど、どこか強さと暖かさを感じる性格が見た目にも影響を与え、魅力を作っている。

ゆっくりと手を伸ばして、その顔に触れてみた。

夕べ抱き合った時には、ただ愛し合う事に夢中になってしまって司の顔を見る余裕なんてなかった。

愛し合っている最中、私の全てを自分のものにしようとするかのような強い視線を向けられて、照れくさくて司の顔をじっと見る事なんてできなかったな。

それにしても、司に抱かれるのは本当に幸せな時間だった。

確かに私には初めての体験ではなかったけれど、大学時代に付き合っていた恋人と別れて以来、誰にも見せなかった体は恥ずかしさに溢れていて、司にはそれが

『たまらない』

らしいけれど……。

こうして、じっくりと間近にある司の顔を見ていると、本当に気持ちも体も全て、司に持っていかれたなと、体が熱くなって、困る。

こんな甘ったるい感覚も初めてで、どこまで私は恋愛知らずだったんだろうと実感してしまった。
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