風に恋して

追憶

レオがいつものように執務を終えてリアの部屋へ向かうと、リアがベッドでシーツを被り、丸まっていた。

あれから数日……ずっとこの調子だ。

食事も全く手をつけないことが多く、食べても2~3口でもういらないと言う。ならばお腹が空いたときに、といつも軽食を部屋に置いておくが、手をつけている様子がない。

たまにパンがなくなっていることがあるが、バルコニーから小鳥たちに与えているのだろう――と。それがカタリナからの報告だった。

「リア」

レオが呼びかけると、リアがビクッと肩を震わせたのがわかった。こうしてリアに話しかけるのは、あの夜以来だ。

あれから……毎日執務の後にリアの様子を見に来ていた。しかし、こうしてシーツに包まったリアを見て、すぐに部屋を出る。「おやすみ」と、独り言のように呟いて。

リアが眠ったふりをしているのも知っていた。レオの顔を見たくないのだろう、ということも。だから、しばらくそっとしておこうと思ったのだけれど……さすがにここまで頑なになるとは思わなかった。

レオがベッドへと歩みを進め始めると、リアはバッと勢いよく起き上がってベッドを降りた。淡いブルーのナイトガウンがひらりと舞うように、バルコニーへとつながる大きな窓へと向かっていく。

そんなリアを見て、レオは素早く呪文を唱えた。

ガタン、と音が響く。

リアは怯えた表情でレオを振り返った。
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