シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

入口 煌Side

 煌Side
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東京都新宿――

喫茶店「安愚楽(あぐら)」。


人通りの激しい大通りから裏に入ったその場所に、アホハットが待ち合わせに指定した、古ぼけた喫茶店はあった。

人通りが…と言っても、やはりそれはかつての話であって、太陽が煌々としている活動時間であっても、歩行人は殆(ほとん)どいねえ。


そこから裏道に入れば、もうその辺りは寂れるにいいだけ寂れた印象で、此処が本当にあの喧騒に満ちていた不夜城…新宿界隈なのか疑わしくなってくる。


別世界の印象だ。


その中の…喫茶店に、更なる世界に通ずる道があるらしい。

そんな話はかつて桜から聞いたことがあったような気もするけど、「ふうん」「あっそう」で聞き流していた夢物語レベル。


裏世界に一番近いはずの桜差し置いて、俺が行くなんて誰が思うよ?


桜きっと悔しがっているだろうなと思いつつ、俺は…かつての御子神祭の剣舞で、玲ではなく俺が櫂の相手に任命された時並みに、嬉しかったりしている。


だからもう、櫂と共に裏世界へ行く気満々なんだ。

大好きな幼馴染を守る気満々だ。


槍でも鉄砲でも、何でも来やがれ!!!


そう息巻いて、まず出てきたのが喫茶店。


――「安愚楽(あぐら)」は裏世界(アングラ)とかけてんのや。


そう奴は偉そうに言ったけれど――


「普通の喫茶店だよな?」


何処をどう見ても…喫茶店。


出鼻を挫かれた気分だ。


少々調度が古めかしく、照明も薄暗い。


大きなカウンターテーブルが拡がり、2人席と4人席が2つづつあるが…どうやら客は俺達だけらしかった。


ちょび髭の厳めしい顔をしたマスターが、4人席を案内する。

店員はBARのバーテンダーみたいな雰囲気を持つこの男のみらしい。

愛想もへったくれもねえ。


………。


ちらりと壁に貼られた紙を見た。


『大人気!!!

寒い冬には温かい苺カフェ・マキアートはいかが?

可愛く笑うウサギさんで心もほっこり』



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