Only You

06 晴間

 すっかり暗くなった帰り道。
 弱すぎる自分が悲しくて、どうやって綾人さんの腕に戻ればいいのかと考えながら帰っていた。
 もったいないぐらい好かれてて、私だって好きなのに……恋愛っていうのは様々な外からの影響で不安定に動いてしまう。


“乗り越え方なんか誰も教えてくれない……”


 そんな歌の一節が耳に入ってきて、ふっと足を止めると、路上でギターをかき鳴らすストリートミュージシャンが透き通るような声で歌っていた。



君の心は君だけのものだよ
君を悲しめる原因が何でも、それを乗り越えられるのは君だけさ
乗り越え方なんか誰も教えてくれない
だから愛する人の力を借りて
素直になればいいだけさ
 
ねえ……君には素直になるっていう力は残ってるじゃないか

君を愛してくれる人がいるよ、きちんと目を開けて見てみなよ
ほら、君を抱きとめる暖かい手がいつでも差し出されてる……



 それを聞いていたら、私は自然に涙が出てきた。

 悩みを乗り越えるのは自分の力。
 答えを見つけられるのは自分……。
 自分で見つけ出さなきゃ。

 せっかく差し出された手を、私は見ないふりしようとしてる。

 こんなにメソメソしてたら、綾人さんだって綺麗だなんて言ってくれなくなるに違いない。
 私は自分であの人を選んだんだんだから、もっと自信を持ちたい。

 誰かが言ってた。
 やり直しはいつでも、どこでも出来るって。
 終わりを考えながら恋愛するのは止めて、私は今綾人さんと精一杯一緒にいる努力をしないと……一生後悔するね。
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