Only You

10 信じる力(本編最終回)

「え、私が異動ですか?」

 人事部長から呼び出されて行ってみると、驚く命令が下った。
 総務部にいる私が営業部へ異動し、そのまま仙台へ向かへという話しだった。

「まあ君が全く営業に興味無いなら話しにならないんだが。仙台支社は今天海さんが抜けてちょっと穴埋めが難しくなってる」
「そうなんですか」
「ああ。だから長坂をあっちにやろうと思ってるんだが」

(長坂さんが……)

「それがねぇ、パートナーに一人つけるっていう条件なんだ。長坂に聞いたら君を指名してきたんだよ」

「ええっ!?」

「まあ、そういう事になった。人事としては長坂のキャリアと感覚を買ってるから、是非お願いしたいんだが」

 あまりにも意外過ぎる展開に、事態を飲み込むのに時間がかかった。
 総務の私が営業に移るというのもかなり驚いたけれど、そこからさらに仙台に異動となると……当然綾人とは離れてしまう。
 でも仕事の命令だし、簡単に断る事もできない。
 長坂さんは私の何を買ってパートナーになんて言ってきたんだろう。
 ビジネスと私情を混同する人じゃない気がするから、きっとそれなりの理由があるんだろう。

 強引に勧めないとは言いつつ、この転勤を断ったら多分仕事を失う事になる気がする。
 総務は若い子だけで十分まわせている状態だ。
私はそろそろ退職かステップアップしないと、実際居づらい環境なのも本当だ。
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