《続》跡目の花嫁さん~家元若旦那の危ない蜜月~

月の影ー桃SIDEー

本当の月は夜空に煌々した光を降り注がせて、私の手の届かない所にあった。



「もう、君と二人っきりでは会わない…それが俺の答えだ。桃さん」


「透真さん、お元気で」


私は助手席から降りて、マンションのエントランスを通っていく。



キスを交わし、少しだけ眠ったけど、それだけ。



透真さんは紳士だった。



部屋のリビングには明かりが点っていた。

玄関には和也の革靴はないし、消し忘れた記憶も無い。


私は用心深く、リビングのドアを開けた。



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