ヴァージニティー

3-1*午前5時

空が白み始めている。

夕子はぼんやりとそれを眺めながら、ゆっくりとした足取りで自宅へと向かっていた。

樋口に抱かれた。

朝人を裏切った。

「――ふっ…」

泣き過ぎて、目が痛い。

それでも悲しい時や悔しい時に涙が出てくるから、人間の躰はよくできていると思った。

家が近いから、もう泣きたくないのに。

目が痛いから、もう泣きたくないのに。

朝人に心配かけたくないから、もう泣きたくないのに。

今は泣くことよりも、樋口の欲望で汚された躰をどうにかして欲しい。

そう思っていたら、家についた。
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