恋獄 ~ 紅き情炎の檻 ~

4.ハズレくじの真実




────30分後。


花澄はテーブルの端の方の席で、隣に座った男性と談笑していた。

本間と名乗ったその男性は、石油業界の大手・昭和興産に勤めているらしい。

人当りは柔らかいが鋭い機知を感じるその瞳は、まさに『デキる男』といった感じだ。


「……花澄ちゃんは、どこに勤めてるの?」

「新宿にある、『森口商事』という天然繊維の卸会社に勤めています。30人くらいの小さな会社です」

「天然繊維って言うと、ケナフや竹、月桃、ヘンプとかかな?」

「ええ。お詳しいですね?」

「合成繊維は石油から作るからね。アクリル、ナイロン、ポリエステル……。でも今、繊維業界は大変でしょ?」

「ええ、まあ……」

「東洋合繊みたいに、いち早く多角化に成功した企業は生き残って成長してるけど、そうじゃないところはこの10年であっという間に衰退したからね~……」


本間の言葉に、花澄は少し笑い、俯いた。

まさかここで『東洋合繊』の名が出てくるとは思ってもみなかった。

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