僕が君にできること

偽らない想い

そして隼人は席を立った。

私には引き止められなかった、追いかけられなかった。


さっきよキャンドルが大きく揺れ消えかかるほどの風が一瞬吹き抜けた。
それでも消えない炎を私は見つめた。





私は店を出て人の流れに逆って歩いた。
楽しげに笑い合う恋人同士気持ちよさそうに酔ったサラリーマン。その会話が耳の中に入り流れていった。


見上げるとそこにはあなたが笑っていた。


頬をつたい顎からこぼれ落ちるものに、私は泣いているんだと気がついた。



忘れようと思えば思うほど、あなたへの想いは胸に深く刻み込まれていた。


苦しくて苦しくて・・・・・。



あなたの唇も、触れた肌も、髪もそして冷たい鼻先も、私に深く刻み込まれた傷のようにあなたを思い出させた。



覚悟していたけど、心をえぐられることがこんなに苦しいなんて思わなかった。




あなたが目の前にいて抱きしめることができたなら。
そういつも思っていた。




そして私はあなたと出会った場所に立っていた。
< 52 / 54 >

この作品をシェア

pagetop