ビロードの口づけ 獣の森編

 (9)



 廊下に出たクルミは辺りをキョロキョロ見回した。
 見渡す長い廊下には、目当ての姿はない。
 真っ直ぐ階段へ向かう。
 駆け下りている途中で出口へ向かう大きな背中が目に止まった。

 そのまま外に出られてはまずい。
 追いかけてクルミまで外に出てしまったら、またジンに心配をかけてしまう。

 クルミは階段を駆け下りながら彼の名を呼んだ。


「ザキ!」


 ザキが足を止め振り返った。
 目が合ったクルミは一気に側まで駆け寄る。

 足止めできた事に安堵してホッと胸をなで下ろす。
 頭の上からからかうような声が降ってきた。


「王妃様が直々に何の用だ?」


 見上げると興味深そうに見つめる金の瞳と視線がぶつかった。

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