ジルとの対話

朝の支度

朝になるとジルの恋人が起きて、昨晩の荒れた様を見た。
だらしなく眠るジルとスターリンを、黒猫のティティは前脚でフライパンを床に転がし、けたたましい音を立てて2人を飛び上がらせた。
「あなた方、2人は私を置き去りにして、ずいぶん楽しんだらしいわね。良いこと、朝の食事を作ってもらいましょうね!」
そう言っているかのようにティティは ジルの頭に乗った。
「ティティ、僕達2人ではなかったんだよ。君も知ってるだろ?僕の影を見つけたんだ。」
ジルはティティを捕まえ、弁明した。
するとティティは黒猫から、人間の女性に姿を改めた。(猫から人間の姿になるのではなく、人間の姿から猫にティティは変わることが出来た。他者との関係を拒む力が働き、彼女はそんな魔法が使えるようになった。)
「本当に嬉しいわ。」
ティティはジルを抱きしめた。
「じゃあ。何か食べようか。二日酔いには、なにがいいのかな?」
スターリンは割れそうな頭を押さえて、言った。
「ラディッシュをサラダにするわ!」
ティティが、幸せそうにキッチンにたった。
彼女が朝の支度をしている時に、ジルとスターリンはキースの話をした。

「キースは、いいやつだ、アメリカに行った後なんて、寂しいよ。」
ジルがぼやいた。
「イングリット・バーグマンを好きだと言っていたし、なによりプログレッシブだ。」

「チャイコフスキーの6月もいいんだが、ショパンが感傷的だなんて、ラベルを演奏してやりたかった。」
ジルが両手を広げて言った。
「星を見向きもしなかったが、ヴィヴァルディを崇拝しているのを気に入った。」
そうスターリンが言うと、ティティがサラダとパンの朝の食事を運んできてくれた。
「ティティ、ありがとう。」
ジルがティティの頬にキスして、自分はオレンジジュースの準備をした。
「キースの話を聞きたいわ。」
ティティが、席について訪ねた。
「びっくりしたのは、僕がピアノで、星空を作っていたら、エレクトロニクスなギターの音が聞こえて来ていてね、何事かと思ったよ。彼はアメリカのニューヨークでコンサートが有るみたいで、ギターの音を確認していたらしい。彼は、コンサートでリハーサルしながら、客に見せるのが売りらしい。だから、練習してたんだ。」
ジルが笑いながら、ティティに話した。
「嘘みたいな話ね。」
笑顔を返しながら、ティティは言った。
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