俺様編集者に翻弄されています！

Chapter2

　大海出版は東京の都心部にある大手出版社だ。

電車に揺られて窓の外を眺めていると遠くに飛行機が飛び立っていくのが見えた。


（あの飛行機は何処へ行くんだろう……）


　悠里はこの光景を見るといつも思う、どんな国へ行くのだろうかと想像する。



＜あなたのお名前は悠里さんというのですね？　あぁ、なんて可愛らしい……＞

＜え？　私の名前が？　そ、そんな……＞

＜どうかご謙遜ならずに、私はとあるアラブに位置する王国の王子です＞

＜お、王子さまーーー！？　ほんとにいるんだ！＞

＜今夜はどうか、私の王宮にて一緒にお食事なんてどうですか？　その後も是非……＞

＜その後って……ま、ままままさか、一夜のアバンチュール!?＞



「～～お出口は右側～～お降りの際はご注意ください」


「っ!?」


　鼻の詰まった車掌アナウンスに悠里の妄想が途切れると、頭の中に思い浮かんだイケメン石油王の残像が煙のように消えてしまった。

　不用意に現実に引き戻された悠里は、小さくため息をついた。そして携帯画面の時計に目をやった。