♡祐雫の初恋♡

真夏の雷雨


「さぁ、祐雫さん、

 嵩愿家の探検へ出発しましょう」

 慶志朗は、靴を脱いで、座敷へ上がると、祐雫に手を差し伸べる。


 祐雫は、慌てて靴を揃えて、慶志朗に従う。


「探検でございますか」


 慶志朗は、奥の廊下へと祐雫を導き、

 廊下から伸びる木製の階段を祐雫の手を引いて上って行く。


 薄暗い急な階段は、延々と続いているように感じられたが、

 祐雫は、慶志朗の手に掴まれば、どこまでも行ける気がして、

 何段もの階段を上った。

 
「到着です」


 階段の先には、見晴らし台があり、嵩愿家のお屋敷はもちろんのこと、

 街全体の景色がぐるりと見渡せた。


 陽射しが燦々と照りつけているにもかかわらず、

 涼風が吹き渡り、

 高い屋根のお陰で、夏の暑さを忘れるほどの涼しさだった。

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