冷たいアナタの愛し方

幼き日の約束

「オリビア、お墓参りに行こうか」


8歳になった頃、父のへスターと母のアンナに手を引かれ、敷地内の王族たちが眠る墓所に連れられたオリビアは、へスターとアンナの顔を交互に見て表情を窺った。


「本当のお姫様…安らかに眠ってるといいね」


「…そうだね。そしてオリビア、今日はお前の誕生日でもあるんだよ。お父様とお母様の娘になってくれた大切な日だ。お前は養女だけれど、死んでしまった娘の分まで愛してあげるからね」


「うん!私お花を摘んでくるね」


綺麗に整備された墓所のあちこちには花が咲き、ドレスの裾をつまんで走って行ってしまったオリビアを優しい眼差しで見つめたへスターとアンナは、一応辺りに人気が無いか探った後、小さな小さな墓の前で脚を止めた。


…ここには誰も眠ってはいない。

皆とオリビアを信じ込ませるために作った偽物の墓だ。


「オリビアには養女だと信じ込ませてあるが、この前聞かれたんだ。…どうして私の胸から剣が生えてくるの?”と」


「あなた…!それを誰にも見られてはいけないわ。あの子…あの剣が使えるの…?」


オリビアと同じ金褐色の長い髪をひとつに括ったへスターは、よろめいたアンナの肩を抱いて木陰へと誘導して座らせる。


「オリビアによるとあの剣…“覇王剣”は自由に出し入れができて、紙よりも軽いらしい。覇王剣はあの子の成長に合わせて大きくなっている。私も持たせてもらったが…重たくて持てなかった」


「そんな…!じゃあ…あの剣はあの子しか使えないということなの…?」


「そういうことになる。創世記には覇王剣は幻の金属オリハルコンを太陽の光で溶かして鍛えたものだと書かれてある。それと…使い手次第で容易に世界も破壊できる、と」


アンナは唇を震わせてへスターにしがみつき、オリビアが息を切らしながら両手に花束を抱えて戻って来た。


「このお花でお墓を飾ってあげるの。お姫様、また会いに来ます。あなたのお父様とお母様を大切にします。だから安らかに」


へスターとアンナはいい子に育ってくれた、と素直に思った。

だがオリビアの存在を知られてしまえば、道具にされるか殺されるか――末路は悲惨なものとなりかねない。


隠さなければ。

これからも、ずっと――
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