サクラドロップス
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アタシには、双子の兄がいたらしい。
誰に話を聞いても誉め言葉しか出てこない、理想の兄。
そりゃ、死者に暴言吐くひとなんて少ないとは思うけどサ。ちょっと、異様なくらいの愛されよう。
『ツキくんは器量も良くてやさしくて、本当に良い子だった』
『ツキくんに憧れてた。誰にでも親切で、丁寧で』
『ツキはアンタを庇って死んだの。アンタは、ツキの分まで頑張って生きなきゃ。いつまでもダラダラ会社なんて勤めてないで、はやく結婚して孫の顔でも見せてくれなきゃ』
ツキくんが、ツキくんが、ツキくんに。
庇って助けてもらった・・・?
それはありがたいと思う。
でも、いくら双子だからって、もういないひとと比べられても・・・正直、困るのよ。
綺麗で可愛くてやさしいツキくんは死んで
人並みで可愛くなくていじわるなアタシが生き残った。
でも、アタシにどうしろっていうの?
家を出て働いて、残業して
家に少なくはないお金を入れて、妹にお小遣いをあげて・・・
それなのに、はやく結婚しろとか言われてサ。