サクラドロップス

-8-


アタシには、双子の兄がいたらしい。

誰に話を聞いても誉め言葉しか出てこない、理想の兄。

そりゃ、死者に暴言吐くひとなんて少ないとは思うけどサ。ちょっと、異様なくらいの愛されよう。


『ツキくんは器量も良くてやさしくて、本当に良い子だった』

『ツキくんに憧れてた。誰にでも親切で、丁寧で』

『ツキはアンタを庇って死んだの。アンタは、ツキの分まで頑張って生きなきゃ。いつまでもダラダラ会社なんて勤めてないで、はやく結婚して孫の顔でも見せてくれなきゃ』


ツキくんが、ツキくんが、ツキくんに。


庇って助けてもらった・・・?

それはありがたいと思う。

でも、いくら双子だからって、もういないひとと比べられても・・・正直、困るのよ。


綺麗で可愛くてやさしいツキくんは死んで

人並みで可愛くなくていじわるなアタシが生き残った。


でも、アタシにどうしろっていうの?


家を出て働いて、残業して

家に少なくはないお金を入れて、妹にお小遣いをあげて・・・


それなのに、はやく結婚しろとか言われてサ。


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