恋人たちのパンドラ【完】

(2)淡恋

それから火曜の午後と土曜の午後は壮介もひかり園に現れるようになった。

悠里は子供たちに紙芝居を読み聞かせながら、窓の外で男の子たちと無邪気にサッカーをする壮介に見とれていた。

「ユーリ、次読んでー!」

子供たちに催促されて我に返ることが何度も続いた。

「あ、ごめん。どこまで読んでたかな?」

子供たちのブーイングであわてて紙芝居をめくろうとして、それを床に落とした。

「あーあ。ダメじゃんユーリ」

「ごめん。ほんとごめんね」

小さい子供たちに責められている悠里を助けたのは、シスターだった。

「心ここにあらずね。いいわ。今日はあっちも終わったみたいだし、あなたも帰りなさい」

悠里が拾い集めた紙芝居を受け取って、シスターは窓の外を眺めた。

シスターの意図することが分かったのか、悠里はほんのり顔を赤くして

「ありがとうございます」

そう言い残して、外の壮介のもとに駆けて行った。
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