淡い初恋

届かぬ想い・・・

暫くすると龍くんが戻ってきた。「ユリさん、用事があるって言って先帰っちゃった。」と言うと「あぁ、さっきそこで会った。」と言って彼は席に腰掛けた。私は久々の二人っきりに胸が高鳴ると突然「タバコ吸って良い?」と龍くんが聞いてきた。「え!?」私は驚いて何も応えられずにいると彼は近くにあった灰皿を自分のところに引き寄せ、タバコを吸い始めた。

微かに目を細め、タバコを味わう彼の姿が妙に色っぽくて思わずドキッとした。真面目な彼がタバコなんてと一瞬戸惑ったが、大人の色気が増したのだなと思ったら胸がときめいた。「ねぇ、龍くんって今何の仕事してるの?もしかしてベンチャー企業立ち上げたの?」と聞くと「ベンチャー?」と訝しげな顔して聞き返してきた。私は、彼のその態度に妙な緊張感が芽生え、「え、あ、だって高校時代、企業立ち上げるって言ってなかったっけ?」としどろもどろに聞き返すと「あぁあ、そんなこともあったな。」と息を吐きながら彼は素っ気なく応えた。

ドクドクと鼓動が早まる。なぜか、怖く感じて、理由が聞けないでいると龍くんから言ってきた。「あんなハイリスクで生活が不安定になる綱渡りなこと、この俺がするわけがないだろ。」 彼は、タバコの火を灰皿で押し消すと肘をテーブルに付け、自分の手のひらに顎を載せると、私を見てきた。

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「そ、そうなんだ。将来はどうするの?」
「ベンチャー企業を立ち上げたい。」

「それは、またハイリスク・ハイリターンな・・・」

「まぁ、今はまだどんな技術や製品を開発したいとかは考えてないけど、いつかは経済学や国際経済等を学んで俺は新しいビジネスを生み、トップを目指したい。」

「すご~い!すご~い!」

「でも、兄が言うように失敗したら大損になる。それでも俺に付いてくるか?」

「うん!!」

「え?」

「絶対龍くんだったら成功するよ!私、応援する!そして何か手伝えることがあったら私も協力するよ!!」

「希じゃぁ、手伝っても俺の足を引っ張るだけだよ。」

「何よ~。」

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私は思わず目を逸らして俯いた。どうしたんだろう、急に。さっきまで、懐かしい話で盛り上がり、あの頃と変わらない無邪気な笑顔で話しかけてきてくれたのに。今、私の目の前にいる人は全く別人のようだよ。


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