あの加藤とあの課長

セクハラです

「ラブラブじゃないの。」



木曜日、お昼休みを利用して敏ちゃんを訪ねて医務室を訪れると、唐突にそんなことを言われた。



「何の話…?」



丸椅子を引き寄せて敏ちゃんの正面に座ると、敏ちゃんは頬杖をついて言った。



「さっき源が来たのよ。」

「生渕さんが?」



どうしたんだろう。

オフィスにいたときは体調悪そうには見えなかったけどな…。



「なんだか風邪引いてたみたいよ? オフィスでは気を張ってたんじゃないかしら。」

「熱は?」

「微熱程度かしら。まあ悪化しないよう気を付けることね。」

「ふぅん…。」



大丈夫かな…。



「で、アイツ、そんな状態なのに惚気るだけ惚気てったのよ。」



ぶすっとむくれると、敏ちゃんは足を組んで言った。



「で、陽萌は何?」

「あぁ、専務と常務の話聞きに来たの。何か情報入った?」

「それね。」



敏ちゃんは難しい顔をすると、ボーッと壁を眺めながら言った。



「何人かに接触出来たんだけど、誰も話してくれなかったのよ。」

「え…。」

「異動や出向してる子に訊いたんだけど…、忌まわしい記憶のことは話したくないわよね、普通。」

「そっか…。」
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