ヤンキー君と異世界に行く。【完】

・伝説の剣



(みんな……!)


仲間たちの背中を見つめる仁菜の横で、アレクはぼう然とエルミナの亡霊を見つめる。


まさか、こんな形で再会することになろうとは。


「エルミナ……」


自分のせいで、彼女は悲しみの淵に沈んでしまったと、アレクはこれまで自分を責め続けてきた。


いくら後悔しても、しきれない。


うずくのは、古い傷跡。


失ったのは、左目の光じゃない。


アレクが生きていく上で、もっとも大事なものだった。


「エルミナ……すまなかった……

俺は無力で、何もできなかった……」


アレクは水と化してしまったエルミナを、深紅の隻眼で見つめる。


もう、彼女の実体は、この世にはない。


「エルミナ、頼む。

さっき泉に飛び込んだ俺の仲間を、返してくれ」


仁菜もエルミナを見つめる。
しかし、返事はない。


エルミナはただ、涙で潤む瞳で、アレクだけを見つめていた。


そんなエルミナに、アレクは懇願する。


「頼む。俺が代わりに、どんな呪いでも罰でも受けるから。

関係のないハヤテは、返してくれ」


『…………』


「俺がキミに、頼みごとをできる立場じゃないことは、わかってる。

でも……頼む、俺はキミにどんな償いでもするから……」


仁菜は黙って、アレクの苦しみに歪む横顔を見つめる。


そんなアレクの真剣な願いに、エルミナは……


『私が聞きたいのは、そんな言葉じゃないわ……』


首を、横にふった。




< 102 / 429 >

この作品をシェア

pagetop