塔の中の魔女

語られし王国の末路


金髪の青年は爽やかな青い目を、これでもかと見開いていた。

彼の瞳には怒ったまま腕組みをする幼い自分の姿。


「ばぁさん?」


信じられないと、彼の唇がその言葉を紡ぐのを、

忌々しげに睨んで頷く。


「そうじゃ、わらわがこの塔のあるじ。
偉大なユダの王に忠誠を誓い、代々三賢人に名を連ねるメイジェフ公爵が娘、
最年少黒導師にして、王子の世話役をさせていただいておったエカテリーナじゃ
……元、な」


「…………」


エカテリーナがふんぞり返って高飛車にそう名乗ると、

青年は未だ、呆然としていて動かない。


エカテリーナは鼻を鳴らした。


「なんじゃ、高貴な身ゆえ畏れをなしたか?
だが、臆する必要はないぞ、小僧。
わらわは魔法も使えぬ矮小な者を虐げる趣味はないゆえな」


「…………」


青年はまだ、ピクリとも動かない。
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