君のところへあと少し。
(その3)波留と和也

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早朝。


まだ薄暗い朝の海に彼を見つけた。
波に揉まれ果敢に攻めるナリの姿を。


それまでは特に気に留めなかった。
友達、という感覚。
筋肉バカくらいに思っていた彼の強靱な肉体が、何故必要なのかわかった。
サーフィンには詳しくない。
でも、ナリが努力しているのは見ていてわかった。




かっこいい。

そう思った。


一度気になるとダメだった。
気持ちが抑えられなくなった。

だから、バレない様に素っ気ない態度をとる。

ホントは好きなのに。


甘い物が大好きで、スーツが似合ってて、片腕で自分を軽々と抱き上げてくれる、笑顔の可愛いヒトを。


隠してたのに。


なんで奏は簡単に言うんだろう。


「それなのにさ、ハルはナリに対して素っ気ない態度ばっかり。
見ていてイライラするよ。

だってさ、ナリはハルをスキなんだよ。

両思いなのにさ。」


奏はふてくされた様に窓を見る。


真夏の海はたくさんのカップルや親子連れで賑わっている。


今日は夏祭り。

更に多くのお客さんが集まるだろう。




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