砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)

後編

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「また……なんと早計な」


事情を知ったカリム・アリーは呆れた声を上げる。

言われなくともサクル自身が重々承知していた。なんと早まった言葉を口走ってしまったものか、と。


「正妃様はなんと?」

「――承知した、と」


子供たちの泣き声の中、リーンの声も涙に震えていた気がする。

それを思い返すだけで、サクルは取り返しのつかないことをしてしまった気分だ。


「また陛下らしからぬことを。たしかに、ハーレムで女性を調達しては、後日、いろいろと正妃様のお耳にも入るでしょう。そんなときこそ、身分をごまかして娼館に出入りすれば済むことではありませんか?」

「いや、違う。そうではない」


カリム・アリーの言葉にサクルは歎息した。


考えなかったわけではない。

だが直前で、自分が女を欲しているのか、リーンを欲しているのか、心の底に潜む本心に気がついた。

それは、行為こそ同じであっても、本質は全く違う。


「私は女が抱きたいわけではない。……子は大事だ。たとえ、髪の色で区別がつく程度の顔であっても、ろくに目も開けず、話しかけてもひたすら泣くだけだったとしても、命がけで守るつもりでいる。だが、私にとってリーンは何より大事な妻なんだぞ! それを……」


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