オフィスの甘い獣(ケダモノ)
【2】 社長の後継者

佑月side~

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獣さんが部屋の精算を済ませていた。



「佑月?」



ホテルのロビーでバッタリと渉さんと千寿子に出くわす。


二人は軽装で互いにスーツケースを引いていた。



ハネムーンは確かヨーロッパ1周10日間だっけ。




「お前も誰かと…」



「え、あ…私は一人で…」



「渉さん…急がないと…空港行きのバス出ちゃうわよ」



「そうだな…佑月…じゃあな」


「いってらしゃい。お義兄ちゃん」


私もお義兄ちゃんに手を振り返した。


「佑月?」



私は10年目にしてようやく渉さんをお義兄ちゃんと呼んだ。


この片恋に終止符を打つ為に。


「早く…」


「ああ…佑月…いってくるよ」

お義兄ちゃんは挨拶を返して、急ぎ足で千寿子さんとホテルの外に向かった。











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