重なる身体と歪んだ恋情

千紗

彼の手が、私の肌を滑る。

彼の唇が、私の唇に重なる。

彼の熱が、私の熱をさらに上げていく。


怖くないわけじゃない。

だけど、それ以上に甘い感覚が私の心を蝕んでいく。

なにも身にまとわない姿なのに、隠すことも忘れて唇を合わせて、崩れそうな身体をなんとかしたくて、彼の背中に腕を回した。


「――っ!?」


指先に触れる違和感に彼の背中を見れば、火傷を隠すように張られた布が見えた。

あれだけの火事で、足を骨折くらいですむはずがない。

肌を滑る手に包帯、その手が胸の先端を掠めていく。


「――あぁ」


こんな状況なのに、私の身体は勝手に甘さだけを感じとっていくのが分かる。

なんて、はしたない。

けれど彼はそんな私の体を楽しむように、何度も胸の先端を弄んでは唇を合わせ、さらに中まで入り込んでくる。

そして、


「あっ、あぁ――っ!!」



彼の指が胸から腰に回されて、それから私の中心を軽く掠めた。


「濡れてますよ?」


艶のある声で耳まで犯される。


「もっと欲しいならこちらへ」


そう言って彼はベッドの背に自分の背を預けるようにして、私の身体から離れてしまった。


「それとも、止めますか?」


まるで試すかのような彼の言葉。

ううん、きっと試しているのだろう。

私に彼を受け入れる覚悟があるのか、

私に罪を償う気があるのか、

これから先を、彼に捧げるほどの忠誠を持ち合わせているのかを――。

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