縛鎖−bakusa−

 


山本と言う女教師は現在うちの高校にはいなかった。



私が持っている情報は、15年前にうちの高校に在籍していたと言う事実だけ。



さて、どうするか…

取り合えず先生達に片端から聞いて回った。

「知っていますか?」と。



すると以外とあっさり知り合いに辿り着く。

教師の世界と言うのは案外狭いのかも知れない。



知っていたのは、もうすぐ定年を迎える現国の男性教師。


老眼鏡を押し下げ、裸眼で私を見ながら言った。



「ああ、山本ね。わしがこの学校に来る前の職場が一緒だったよ。

彼女は確か…結婚して…何だったかな…

や…や…そうだ矢野だ。矢野陽子。名前が変わったんだ。

矢野先生がどうかしたのか?」



「はい…

矢野先生の昔の教え子と最近知り合って、どうしても伝えたい事があるから捜して欲しいと頼まれました」



「ほー、そうかそうか。恩師に会いたいと言う生徒がいるのか。

いや〜わしもな、最近昔の教え子が会いに来てくれてな…………―――」




嬉しそうな顔して話す現国の先生は、勘違いしていた。



恩師なんかじゃない。

怨師と書くなら当たっているが。



勘違いしたまま目の前の先生は話し続ける。


最近会いに来た昔の教え子に感謝され、先生のお陰で今の自分があると言われたのだと私に自慢する。



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