縛鎖−bakusa−

 


おかしい…

沢村幸則の言葉通り、イイ事で人の役に立つ事を実践しているが、心の鎖は消えてくれない。



ある朝は軍手にビニール袋を持って近所のゴミ拾いをし、


ある昼は弟の為に面倒臭いけどプリンを作ってあげ、

夏休みの宿題まで手伝った。



ある夜は疲れて会社から帰った父の背中を流し、

晩酌に付き合い、深夜まで酔っ払いの愚痴を聞いてあげた。



それでも鎖は外れない。

今日も胸の中でジャラジャラと不快な音を立て続けている。



なぜ…?
何が足りないの?



夏休み終わり間近の日曜日、心に鎖の存在を感じながら寿荘に向かった。



理由はもちろん沢村幸則に相談する為だ。



彼は私より鎖について詳しそうだった。


イイ事で人の役に立つ事を実践している私に、

何が足りないのかを教えてもらおうとしていた。



2階建ての古いアパートに着きキョロキョロと辺りを見回すが、彼の姿は見えず霊気も感じない。



彼は恐らく地縛霊ではなく浮遊霊だ。

どこへ行ってしまったのか…



うろうろしているとアパート2階の真ん中のドアがギィッと開いた。



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