契約妻ですが、とろとろに愛されてます

婚約指輪

「昼飯に行くぞ 桜木、金は自宅に用意しておいてくれ」


「かしこまりました」


私の肘に手を添えると、エレベーターに乗り地下の駐車場へ降りる。


先日とは違うシルバーの高級外車を運転する真宮さんは、地下駐車場を出て目的の場所まで車を走らせる。


車を走らせている間は無言で、助手席に座る私は居心地が悪かった。


本当にこれで良かったのか……。もう考えたくない。もうサインをしてしまったし、慎を助けなければ。


昼食が目的で出てきたはずなのに、真宮さんが車を停めた場所は銀座にある有名宝石店の前だった。私のような庶民には敷居が高すぎる豪華な店構え。


「真宮さん?」


窓から見える高級感あふれる建物に、キョトンと真宮さんを見る。


「琉聖と呼ぶんだ」


「え……?りゅ……うせい……さん……?」


「そうだ 苗字では婚約者らしくないだろう」


エンジンを切るとあっけにとられている私を尻目に車を降りた。そして車の前を回ってドアを開けてくれる。


テレビの中でしか見たことがない紳士的な完璧なエスコートに私は胸が急速に早く打つのを感じた。


こんな風にされたことがないせいだ。


「ここはレストランじゃないですよ? 」


どう見ても宝石店にしか見えない。


「そんなのは知っている」


「でも……」


「婚約指輪は必要だろう?」


「そうでしょうか?」


装飾品はほとんど持っていないし、付けないので必要性を感じない。


「本物らしく見せなければな。ケチな男だと世間に思われるのは心外だ」


琉聖さんは恋人同士がやるように私の手に自分の手を絡めると、宝石店の入口に向かう。


「これは真宮様 ようこそお越しくださいました お待ち申し上げておりました」


恰幅の良い初老の男性が、琉聖さんに深々と頭を下げる。


「頼んでいた物は?」


「はい ご用意が出来ております こちらへどうぞ」


私達は店内ではなく、更に奥の部屋へ案内された。


高級宝石店に入ったのも初めてなのに、VIPしか入れない奥の部屋に入り、急に自分の服装が気になった。


座り心地の良さそうなソファに座らされると、目の前に選び抜かれたらしい五個のキラキラ光る眩い指輪が置かれた。

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