極上エリートの甘美な溺愛
再会は始まり


その日、仕事を終えた将平は、待ち合わせのカフェでコーヒーを飲みながら玲華を待っていた。

競合他社の新商品のカタログを読みながら、仕様や価格など必要な情報をピックアップしてはいたものの、普段と違って全く頭に入ってこない。

『Rin』に続く新車のデザインを練らなければならないが、なかなか集中できずにいる。

手元に置いてあるスマホを見ると、21時15分。

玲華から少し遅くなるとメールをもらい、落ち着かない気持ちで待っていた。

そんな中では数字や文字なんて頭に入るわけがない。

ふっと息を吐き、カタログをカバンにしまい、窓の外に視線を向けた。

玲華とは何年も会えずにいたんだ。

今こうして待つくらい、どうってことない。

たとえ何分待ったとしても、今日は待っていれば、必ず玲華は現れる。

そのことが、どれだけ自分の心を温かくするのかということに気付き、将平は不思議な感覚を覚える。

昨日までは、こうして玲華を待っていることなんて想像もしなかったな。

玲華とはこの先も、二度とお互いの人生が混じり合う事はないと思っていたが、偶然だと簡単には片づけられない奇跡によって、再びその縁は繋がった。

かすかで細い縁。

それを必死で掴んでいる自分に、ふっと苦笑する。

『思い通りの人生だね』

玲華が何度か口にした言葉に反して、将平が一番手に入れたかったものは、彼自身が弱かったせいで、その手には入らなかった。
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