ファインダーの向こう
第三章 深夜0時のスクープ

Chapter1

 翌朝―――。


「んん……」


 沙樹がうっすらと目を開けると、すでに日は昇っていた。


 昨夜は早めにベッドに入ったつもりだったが、結局、逢坂との会話を何度も反芻しているうちに、寝たのか寝てないのかよくわからないまま朝になってしまった。


(深夜0時に渋谷……)


 沙樹がぼんやりとそんなことを思っていると、突然携帯が鳴った。


(もしかして、逢坂さん?)


 反射的に携帯の画面を見たが、そこに表示されている名前を見て、沙樹は肩を落とした。


「はい」


『あ、沙樹? お母さんだけど。あんた、まだ寝てたんじゃないでしょうね?』


 懐かしいその声に、いつもと変わらない様子が窺えて安堵する。


「ううん、起きてるよ……まだベッドの中だけど」


『全く、全然連絡寄こさないもんだから、こっちから電話しちゃったわよ。元気でやってるの?』


「うん、仕事も順調だし、何も心配ないって」


 沙樹が一人娘だからか、昔から母親は過剰すぎるほど心配性で、週に二、三度は電話を掛けてくる。


『あんた、いっつも電話しても留守番電話なんだから、仕事もいいけどお母さんとしては、早くいい人見つけて落ち着いて欲しいんだけれどね』


「う、うん……」


(始まった……)


 母と電話をすると、必ずといってもいいほどこの話題が出てくる。


『この間、近所のスーパーに行ったらね、あんたと高校の時に同級生だった子、あぁ~名前なんだったかしら、顔は覚えてるんだけどねぇ……旦那さんと、最近産まれたってお子さん連れて買い物に来てたのよ』


「そう、なんだ……」

『私も早く孫の話とかしたいんだから、お父さんだってあの世でヤキモキしてるんじゃないかしら?』
< 39 / 176 >

この作品をシェア

pagetop