YUKI˚*

最後の













夢の中で何度も走った



走って



走って走って




どんなに走っても疲れなかった





けどやっぱり、現実は違うね




ずっと走ってはいられない



苦しくて




早く須嶋くんの家に行きたいのに



足がいうことを聞いてくれない





あたし、須嶋くんのことになると



走ってばっかだな




逃げたり、追いかけたり



須嶋くんに会う前より、確実に足は早くなってる、たぶん





そんなことを思っているといつのまにか



須嶋くんの家が見えてきた





あんなに走っていたのに



近づくにつれ、足の動きはだんだんゆっくりに




最後には歩いて



あたしは呼吸を整えた





須嶋くんの家



少し古びたアパート




その前にあたしは


立っていた





久しぶりだな…



前に来たときはひどい雨の日だった



でも、今日は快晴




悪いことなんか



起こりそうもない





よし、大丈夫。





そう自分に言い聞かせて、あたしはゆっくりと



インターホンを押した





ピンポーン





鳴り響いた音はなんだか寂しい


やっぱり出ないかな




前に来たときたも、須嶋くんは出て来なかった




なんとなくわかってたから



もう、へこんだりしない





そしてあたしは、あの時と同じように



ドアノブに手をかけた





そのとき



ガチャ




ドアが開かれて





開いたのは、

あたしじゃない





じゃあ誰?




「…須嶋……くん?」



あたしの声は




微かに震えていた






「…………」




そこには紛れもなく



彼がいる




須嶋くん。





ただ黙ってあたしを見下ろすその顔は、無表情で



怒ってるのか


そうじゃないのか、よくわからない





「…あの、須嶋く



「ゆきちゃーん!何でここにいんの?!」













え?!






須嶋くんは驚いたって感じで



だけど笑顔




あたしが思ってた反応とちょっと違って



それであたしは驚いた




そんなあたしを見て


「どーしたの??」



って、須嶋くんは本当に不思議そうに


あたしの顔を覗き込んでくる




「どっ、どーしたのって……」



間が抜けて






あたしは





「えっ…ゆきちゃんなんでっ!泣いてんの?!」



「…だっ…だってぇーー!!!」




別に悲しいわけじゃない



自分でもよく、わからなかった




でも




安心、したのかな





泣いてるあたしに



須嶋くんは優しく頭を撫でてくれる





「……ゆきちゃん」



その少し低くて柔らかい声で



須嶋くんに名前を呼ばれて




自然とあたしは顔を上げる






そこには



満面の笑顔の







「海に行こーか」







キミがいた。









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