僕らが大人になる理由

宣戦布告



その人のことを見るだけで胸が苦しくなったり、声を聞くだけで鼓動が速くなったり、切なくなったり。

その人がやること全てが愛しく感じる。


と、高校時代の友人が語っていたのを思い出した。

あたしの母校はお嬢様学校というやつで、あまり彼氏がいる人はいなかった。

だから、彼氏や好きな子がいる子の話はとても貴重で、あたしはそれを、まるでおとぎ話のように聞いていた。

あたしには一生関係の無い話題なんだろう、と思っていたからだ。


それなのに、今、自分が“恋”をしているかもしれないなんて。


「光流くん…。あたし、恋をしてしまったかもしれません…」


昨日の事件があった次の日。

あたしは、たまたま休憩が被った光流くんに深刻な面持ちで相談をもちかけた。

光流くんは、一瞬目を丸くして、それからすぐに真剣な表情になり、さらさらと何かを書き始めた。

それはとある場所の地図だった。


「真冬。はい。じゃあ、来週の水曜日、ここ集合で…」

「なんですかこの地図。ロイヤル、スイートホテル…?」

「ごめんな、真冬。俺、心は全てお前一人に与えられないけど、ちゃんと日替わりで平等に愛してやるからよ」

「………………」

「ごめんほんとごめんマジ冗談だからその軽蔑通り越した薄笑いやめて怖いよママー!」


あたしはそのメモ帳を片手でひねり潰してコーヒーを飲みほした。

相談相手を思い切り間違ってしまったようだ。

ああ、それにしてもどうしよう。

恋ってこんなに簡単に始まっちゃうものなのかな!?

だって、紺野さんと出会って48時間しか経っていないのに。

あたしってもしかして物凄く惚れやすいのかな!?


「…で、紺ちゃんに恋しちゃったの? お前」

「ううう…」

「そうかそうか。それはご愁傷様」

「え。どういうことですか?」

「アイツ彼女いるよ」

「え!?」
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