僕らが大人になる理由

生まれて初めて




赤くなった額を見たら、同情なのか、情なのか、体が勝手に動いてしまった。



感情を抑えきれずに行動するなんてこと、今までなかった。

それなのに一体なぜ?

俺は、珍しく動揺を隠せずにいた。


「ねっむ……」


携帯のアラームをとめて、俺は顔を片手で覆った。

遮光カーテンを閉め切ったままのこの部屋には、昼夜なんてものは存在しない。

携帯の光だけが青白く光っている。

その光を頼りに窓際に行き、遮光カーテンを開いた。

溜息が出るくらいの晴天。タンクトップ一枚で寝ていても寝汗をかいてしまうほど気温が高い。

今日はランチ営業は無く、夜からラストまでの出勤だ。

軽くシャワーを浴びて、髪を乾かさないまま携帯を開いた。


『もう来月のシフト出た?』


由梨絵からのメッセージだった。

そういえば、既読にしたまま放置していた。

俺はシフトの写メを添付して送信ボタンを押した。


…返せなかったのは、少しの罪悪感があったから。

真冬とのことを知ったら、由梨絵はきっと泣いて怒るだろう。



「これは、浮気…?」

< 102 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop