【続】隣の家の四兄弟
隣の気になる人

浩一side



「あれ……?」


休日出勤から戻ると、遠くの廊下で人影が動いた。と、思えばすぐにドアに消えて行ってしまった。


あれって、ウチだったよな。ていうことは、美佳ちゃんかな?

影が消えたあたりを見据えながら歩き進めると、やっぱりウチと美佳ちゃんち付近だ。

休みだから、ウチに来てたとしてもおかしくはないけど。でも、まだこんな早い時間に帰るなんて……。


首を傾げて自分の家の表札を見上げると、玄関の向こうからなにやら賑やかな声がする。


賑やかなのに、美佳ちゃんは帰ったって……どっか具合でも悪いのかな。


不思議に思ってドアノブに手を掛け、家へと入る。
「ただいま」といつもの声量で言ったけど、どうやらまだ気付かないらしい。


足元をみると、靴が……女性物もある?


「……ただいま」
「コウちゃん? おかえりなさいっ」


え。っていうか、この女性は誰……。


「あ、おかえり」
「コウ。おかえりー」


続けて言った、孝四郎と“チハル”を見て察する。


「あ――」
「憶えてる?」
「『アキラもアキラも』の、アキラちゃん」


そうか。チハルの妹のアキラちゃんだ。


「えー。なに? それ」


口を尖らせて、拗ねるようにおれを見つめるアキラちゃんは、もうあの頃のような子どもじゃない。

女の子は変わるっていうけど、ハーフだからか、アキラちゃんはすごい大人に見えた。



< 83 / 286 >

この作品をシェア

pagetop