だから私は雨の日が好き。【花の章】

決着






飲み始めると、さっきまでの冷戦ムードは自然とほぐれるもので。

第一の営業の男の子たちのノリの良さが、飲み会を盛り上げてくれていた。

篠崎は思ったよりも部下たちから慕われていた。


男性社員の前では本性を見せているだろうに。


そんな篠崎を見て、案外悪いヤツではないのかも、とまで思ってしまった。




「篠崎さん、部下に慕われてますね」


「ん?あぁ。打ち解けたのは、最近だけどね」


「そうなんですか」




楽しそうにしている後輩たちを見て、こんな飲み会もたまにはいいかも、とまで感じていた。


二十代の元気の良さ(千景は三十歳だが・・・)を見ていると、やはりどこか違うと思う。

二十代と三十代には、見えないけれど大きな壁がある。

それを感じているのは篠崎も同じようで、私達は自然と二人で話をするようになっていた。


相手を見極めるいい機会と思い会話をしているうちに、噂になっているような腹黒さが見えないことに驚いた。

それどころか。

自分の思っていることを正直に表現する男だった。



こんな風で、よく周りの女達を口説いてこれたな、と感心してしまうほど。

篠崎は真っ直ぐで正直だった。




「前の会社では『男に厳しく、女に優しく』がモットーだったんだ」


「篠崎さん、確か前職は金融系でお勤めですよね?それも大手の」


「そんなことまで知ってるの?秘書課の情報網は、やっぱりすごいね」




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