極上エリートの甘美な溺愛


「お客様とは展示場で待ち合わせですか?」

「ああ。お客様の実家が近いそうだから、そこから直接来られるらしい。二世帯住宅を考えてらっしゃるから、ご両親も一緒じゃないかな」

「わかりました。あの展示場にはちょうど二世帯住宅のモデルが建ってましたね」

「他社の商品の中にも二世帯のモデル住宅があるから、そちらに気を取られないように頑張らないとな」

「……ですね」

地下駐車場から会社の正面玄関に車を回してきた篠田は、玲華から幾つかの荷物を受け取ると、後部座席にそれらを詰め込んでいた。

営業担当として展示場に出向く機会は多い。

今日も、二世帯住宅の建設を考えているお客様に商品を見てもらうために展示場に行くことになっている。

篠田の担当として設計を任された玲華は、二世帯住宅を担当するのは初めてで、お客様が何を望んでいるのかを直接聞ける機会を得て気持ちは弾んでいた。

これまでの経験から、お客様と顔を合わせなければお客様が望んでいることはわからないと知っているだけに、まだ契約を結んでいないお客様とも話をしてみたかった。

お客様の生活パターンや家族構成によって変更が生じる箇所はいくつかあり、設計の初めからそれらを頭に入れて仕事に取り掛かりたい。

「相変わらず仕事熱心なことだな」

荷物を積み終え、運転席に乗り込もうとしながら篠田が苦笑した。

本来なら、契約を結んだあとでお客様と会えばそれで十分間に合うのだが、仕事に対して真面目すぎる玲華は、仕事の段取りがつく限り、こうして営業担当と事前にお客様と顔を合わせている。

その熱心さがお客様に伝わり、契約に結びついたこともある。

それゆえ、営業担当から同行を依頼されることも増えてきた。


< 164 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop