翼~開け放たれたドア~

あいつの強さ 自分の強さ

──ピチョン…

「……?」

そんな音に、いつの間にか閉じていた目を開けると、目の前には俺の顔。

垂れる黒髪と首の感覚に、自分が顔を下げていたことを知って、ゆっくりと顔をあげた。

途端に目に飛び込んできたのはあいつの後ろ姿で、思わず息をのんだ。

真っ白い服に身を包んだ──春輝がそこにいた。

「春輝…?」

そう、弱々しく問いかけても、春輝は振り返らなかった。

だけど、あの真っ白な髪は。

あの寂しげな背中は。

他でもないあいつを、俺が見間違えるわけがなかった。

愛しい、あいつのことなんだから。

その小さな姿から目がそらせない。

俺は、ゆっくりと春輝に近づいていった…。

だけど、あと数歩で春輝に手が届く。

そんな距離まで近づいたとき

「……いいの?」

そんな、あいつの澄んだ声が前から聞こえた。

何がだ?

そう思って立ち止まる。

そんな俺の考えを読み取ったかのように、春輝は振り返って俺のことを見据えた。

その白くて細い腕をすっと伸ばし、俺の後ろを指差す。
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