私は男を見る目がないらしい。

*蘇ってくるもの 「あー、超悔しい。」

 



朔太郎(なのか?まだ疑ってる)を引っ張って来た場所は、店の外に出てすぐ近くにあるベランダみたいな空間。

二人が並んで入るのにちょうどいいくらいの空間だ。

さっきまでいた空間とは打って変わってすごく静かで、パッパーという車のクラクションが遠くで鳴り響いている。

ふわっと夏の夜の風の生ぬるさが私の頬を撫でた。

一気に周りが静かになって気がすっかり抜けてしまった私は、目の前の手すりに手を置いて寄りかかるようにして、ハァ~と息をついた。

すると、上から愉しげな声が降ってきた。


「くくっ。変わんねぇな、美桜。みんなといる時の空気感と、離れた時の空気感のギャップ」

「!……ねぇ、本当に朔太郎、なの?」


私は手すりから手を離し、高校の時の朔太郎の顔の位置よりも10センチほど上にある顔を見上げる。

……確かに言われてみれば朔太郎の顔と雰囲気がすごく似てるし、あの頃の朔太郎を痩せさせたらこの顔になる気がする。

それに、さっきまでは周りがうるさくて聞こえづらかったけど、声も朔太郎と言われれば納得のいくものだ。

 
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