ラブレターを貴方に

ラブレターをやっぱり貴方に



☆*.・゜*。.


私は彼を待っている。

仕事終わりの社員玄関。

彼の友人らしき人に、昨日したためた手紙を渡して貰うように頼んだ。

そして、それを読んだ彼は間違いなく此処に来る筈なんだけど……。


もう、20分は過ぎている。


思わずバッグから携帯を取り出すと、画面を不機嫌に見つめた。

もう、一年前と同じじゃない。


「美紀?」


背後から突然呼ばれた声に、私は膨れっ面で振り返る。


「遅くなってごめん……て、怒ってるな?」

「別に?怒ってないし」

「嘘。ほら、ここ」

そう言って、いつも私の眉間にそっと触れる。

「手紙超嬉しかった、ありがとう。だけど……」

「だけど?」

「本当に俺宛なのかな~?また高橋違いだったり……」

「わー!もう言わないでよ、恥ずかしいんだからね?てか、わざと言ってるでしょ?」

そうやって私の反応を見て、イタズラに笑う翔太。
そんな彼を見ることが出来るのは、私だけなんだよね。

でも、私ばかりからかわれるのもしゃくだから……。

そっと手を伸ばし、トレードマークの眼鏡をはずしてやった。

「あ、美紀、マズイだろ?」

「いいじゃない?今誰もいないんだし」

そう言って、彼の唇にチュッと軽くキスをした。

すると、彼はいつになく真剣な瞳を向けて、私を強く抱きしめた。
少し強引な、だけど私をいつも優しく包んでくれる、その腕が好き。


「そんなに誘惑すると、後悔するよ」


私はゆっくり頷くと、その嵐のような深い口づけを受け入れた。

後悔なんて、する筈がないもん。


だって、


翔太に出逢えて、私は今とても幸せだから。



一年前、この場所で、あなたにラブレターが届いた事は、間違いじゃなかったよ。


「あ、今度の特集、インタビューで美紀の事話したから、読んでね」

「え……えーー!?」






(完)





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