溺愛御曹司に囚われて

2.浮気調査と初恋のあの人






「探るべきね、浮気調査よ」

「う、浮気調査?」


あれから二日後の火曜日、オフィスでこっそり同僚の実衣子(みいこ)に相談すると、妙にうきうきした彼女がそう言った。


「それにしても、あの高瀬くんが浮気ねえ。ちょっとしか会ったことないけど、小夜にベタ惚れって感じだったのに。やっぱイケメン御曹司はやることが違うわ」

「でも、まだ本当に浮気してるって決まったわけじゃないし……」


小声で抗議すると、実衣子はマスカラの重ね塗りですっぴんのときの数倍印象的に見える目をキッと見開いた。


「なに甘いこと言ってんのよ! 昨日見ちゃったんでしょ、スーツの内側にファンデがついてるの。それが誰のものなのか、暴いてやんのよ」


フンッと息巻く実衣子は、このことになるべく触れたくないと思っている私に喝を入れようと、肩をバシッと叩いた。

私がそのファンデーションに気が付いたのは、昨日の夜、高瀬が帰宅する前に改めてあのクローゼットを開けたときだった。
どうしても気になってもう一度ポケットを探ると、私が見つけたはずの口紅もメモもどこにもなくなっていた。
その代わり、電気のついた明るい寝室で確認してみれば、メモが入っていたほうのスーツの上着の内側には、微かにファンデーションがついていることがわかったのだ。

口紅もメモも、回収したのは絶対に高瀬だ。
だけど私にはなにも言わない。

あのとき私がそれらに気づいたってことを、彼は勘付いているのだろうか。
それなら、このファンデーションの跡を、私はどう受け止めたらいいの?

混乱して、どうするべきかわからなくなった私がこのことを相談したのは、会社で仲の良い、恋愛経験も豊富な実衣子だった。
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