右隣の彼

人の幸せを心から喜ぶには時間がかかる


友達が彼氏とイチャイチャする姿を見るほどいらつくものはない。
私に彼氏がいれば、大目に見てやるかと寛大な気持ちにもなるが
残念ながらそんな人はいないから、勘弁してほしい。
でもその席になぜか岸田君も一緒にいる。
なぜそうなったのかというと・・・



昨日仕事帰りにあっこからメールが来た。
あっこの婚約者を私に紹介したいと言うのだ。
私に彼氏がいない事をあっこは知ってるからよほど仕事が忙しくない限り
断る理由などない。

正直、あまり乗り気じゃない。

だって人の幸せを喜べるほど自分の私生活が充実していないんだもん。
それにあっこの彼氏ってかなり年下。
きっと私がいようがいまいが関係なしで甘えるんだろうな~。

私の中の年下男は甘えん坊ってイメージしかない。
その代表格が私の隣の席の岸田君なんだけどね。
何かにつけてせんぱ~~いだもんな・・・
でも先日の企画書の一件で見た岸田君はちょっと意外だったな・・・
ってそんな事はどうでも良くて

私はあっこからのメールに
「うれしい!会ってみたかったんだよね」
ここだけの話、思ってもいない内容のメールを返した。
心が狭いと思うけど、しょうがないじゃない。
人の幸せよりも自分の幸せが最優先なんだもん・・・
でも・・・・ちゃんと会うって返事したよ。
大人な対応とったよ。

大人な対応とったけど・・・・・やっぱり気分は乗らない。
そんな私の微妙な心の乱れをなぜかすぐに察知した人がいた。

岸田君だ

「先輩・・・なんかありました?元気がないと言うか憂鬱そうな…」

鋭すぎる・・・
「ん?ちょっとね・・・」
幸せオーラ全開のこの年下に私の悩みなんかわかるか!
パソコンのキーを叩く速度を速める。
仕事に集中集中・・・
だが隣の岸田君は私と同じ様な速度でキーを叩きながら
しつこく聞いてくる。
あまりにもしつこいのといつも私が相談に乗ってるんだから
たまには私の悩みをぶつけてどんな反応を取るか試してやろうと
キーを叩くのをやめて岸田君に話をした。

親友が結婚することになり婚約者を私に会わせたいと言った。
この親友の彼氏は年下のイケメンだ。
私は今フリーで彼氏がいない。
そんな私が幸せそうな二人の姿を見ていたら
ブルーになりそうで正直あまり乗り気じゃない。
だけど大人にならなきゃと会う事にしたけど
やっぱり心の中では会いたくないが8割なのだ・・・と説明すると・・・

「じゃあ・・・俺付き添いましょうか?」
思ってもいない提案に、へ?と間抜けな返事をしてしまう。
だが岸田君の顔は真面目で
「たまには先輩の役に立ちたいんです。俺いつも相談に乗ってもらってるし」
何かにつけて相談に乗ってもらってると言うが
私のアドバイスはそんなに的確なのだろうか。
私のアドバイスなんて誰でもできそうなものだと思う。
私だったら…こうするなとか、わたしだったらそう言うのは嫌だとか
それのどこが素晴らしい解答なのかよくわからない。
とにかく岸田君はこんな私のどうでもいい解答を真摯に受け止めてくれる子なのだ。
無碍に断るのもなんなんで
ここはお言葉に甘えることにしたのだが・・・・

あっこの彼氏は超絶かっこよかった。
「雑誌とかに出てもおかしくないくらいかっこいいですね」
お世辞抜きでかっこいいのだ。
あっこはがメロメロになるのも無理ない。
「でしょ~彼、いくつもの雑誌に出てるのよ。この間もうちの雑誌ヘアー
特集にモデルとしてもでちゃったの~」


・・・・岸田君に感謝しなくちゃいけない。
こんな超絶イケメンを私一人で見たら多分翌日寝込んでしまっていただろう。
もちろんうちの岸田君だってこの超絶イケメンと肩を並べるくらいのイケメンよ!
だけどその超絶イケメンとあっこのラブラブぶりを一人で耐えなきゃいけないのは
やはりかなりきついかった。 
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