久遠の花〜 the story of blood~【恋】
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――金属音が聞こえる。
重い目蓋を開ければ、険しい表情の先生が見えた。
「日向さんを――返しなさい」
「長が望んでいる」
「では尚更、渡す訳にはいきませんね」
先生の瞳が変わる。途端、月神君は大きく後ろに飛び退いた。
「少々手荒ですが、致し方ありませんね。――骨でも圧し折りますか」
恐ろしいことを、先生は平然と言ってのけた。
思わず目を見開けば、先生は私に視線を合わせる。
「見ない方が賢明です」
ニコッと見せた笑みに、背筋が凍った。
優しい口調なのに……今の先生は、とても怖い。初めて見る雰囲気に、余計目が離せなくなってしまった。
「――邪魔をするなら」
目の前に、刃物が見える。それはいつか、私を襲った男性を殺したのと同じ鎌。
月神君……先生をっ。
「日向さんを抱えたまま、私を相手にするおつもりで?」
「支障は――無い」
強く密着したと同時。鎌は、先生がいた場所をえぐっていた。
「や、めっ……」
止めてと言いたいのに、体に力が入らない。
二人の戦いが激しくなるのと比例して、体に走る痛み。でも、これはチャンスだと思った。昨日も酷い痛みの後、月神君と雅さんを助けた(覚えてないけど)ようだし、このまま痛みが激しくなればもしかしたら――。
私はひたすら、この争いを止めることを願い続けた。