過保護な妖執事と同居しています!

時間も距離も




 夕食を終えて床に座り、一緒にテレビを見ながら私はザクロに問いかけた。


「ねぇ、ザクロ。ザクロって、どのくらいなら私と離れていても大丈夫なの?」
「一瞬たりとも離れていたくありません」


 真顔できっぱりと言い切るザクロに私は苦笑する。


「いや、あの、時間じゃなくて距離の話」


 実は出張で遠出しなければならなくなったのだ。OA機器の新製品発売に伴う技術発表会に招かれて東京まで行かなければならない。

 招待という名のさくらなので、行って主催者に挨拶をして、座って発表会を眺めるだけの簡単なお仕事。とはいえ、職場にザクロを連れて行くのはやはりためらわれる。

 ザクロが繭から出てきた翌日は社員旅行で、絶対に姿を現さないという条件で仕方なく連れて行ったけど、お気楽な旅行とは勝手が違う。

 けれどザクロは私から離れると、生気を補給できなくて生きていけないと聞いた。実家のある故郷の山にもひとりでは帰れないのだ。

 電車で一駅の距離にある会社くらいなら平気らしいけど、東京は実家より遙かに遠い。新幹線でも四時間はかかる。

 たぶんダメなんだろうなとは思うけど、話を聞いたのは繭から出てすぐのことだった。あの頃よりザクロの能力は格段に上がっている。
 今でもダメなのかな?

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