徒花

仕事



ふたりで頑張ると決めたはずなのに、あの日以来、コウは荒れていた。

さすがに女遊びをするようなことはないが、ほとんど毎日のように街で喧嘩を繰り返す。


私はそんなコウを見る度に、やりきれない気持ちになった。



今日もコウは街で、



「どこに目つけて歩いてんだよ! あぁ?!」


いつもきっかけなんて他愛もないことだ。

横にいたユキチくんとダボくんは、面倒なことになったなと舌打ちするが、でも止めてはくれない。


コウは相手の男の胸ぐらを掴みに掛かる。



「てめぇ、俺が誰かわかんねぇのかよ!」


刹那、相手の言い分すら聞くことなく、コウは男を殴り付けた。

ガッ、という音と共に男が倒れ、あたりはざわつく。



「す、すいません! コウさんだって気付かなくて! ほんとすいません!」

「今更謝っても遅ぇんだよ、カスが!」

「助けてください! お願いします!」


だけど、コウは這いつくばる男の腹を、さらに蹴り飛ばした。



さすがに私は顔を逸らす。


正直、何度見ても慣れないし、怖い。

だから私は、コウを止めることができなくて。



「クソッ! あの野郎、逃げやがった! ユキチ、追え!」

「はぁ? お前が勝手にした喧嘩だろ。何で俺が命令されなきゃならないんだよ」

「んだと?」

「あ? やんのか、こらぁ!」


いつもなら仲裁役のはずのダボくんももう何も言わず、次第に3人の間まで険悪になってくる。
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