とある神官の話

45~





 <お前が鍵を握っている。真実を探せ。断罪せよ。あいつらは何か、企んで――――探せ。お前は知っているはずだ。"彼"がお前に……お前でしか―――>



 父は、ずっと探っていたのだ。
 一部の神官や枢機卿が行っていたことを。そしてそれをどうしたら良いのか。同じくして知ったアガレスは、父が彼を止められず、彼は行動に移した。それがあの事件。
 あれで死んだ枢機卿や神官は、危険な研究に加担していた。それをアガレスら根絶やしにしようとしたのだが――――彼はまだ動いている。
 それが何を意味するのか。
 ハイネンは、まだその"残り"がいるのではないかと言った。誰かが、繋がっていると。実際、"怪しい者"がいると。


 ―――そして。


 私は宮殿内の図書室にいた。
 どうしても調べたかったのだ。ただ名前と簡単なことしか書かれていないだろうと言われていたが、見たかったのだ。

 その事件と、その人物の名前を探す。




「あった」




 アレクシス・ラーヴィア。
 ハイネンから聞くまで、聞き覚えのない名前だった。

 そこには彼の簡単なことが書かれている。幼い頃に親を亡くし、その後ヴァン・フルーレの神官となり研究者になる。結婚後、その妻が殺害されたこと。そして自身は滞在していた村で魔物によって命を落としたこと――――ハイネンから聞いたままかそこにあった。
 アレクシスには子供がいたが、行方不明のままとなっている。

 ――――彼は生前、セラに"自分は殺されるかもしれない"と話した。

 そしてここに載っている、彼の死因である魔物も、本当かどうかわからない。そういったのは父らしい。
 父とアレクシスは友人で、かなり親しかったそうだ。研究者であったアレクシスは、術式の研究途中で"知ってしまった"。一部の神官や枢機卿らが密かにやっている、残虐な"研究"のことを。

 "殺される前に"、アレクシスは子供や父に研究していたものを―――――。

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