とある神官の話

48~



  * * *




 ――――――???


 今までのことを、振り替える。
 色んなことがあった。本当に色んなことが。私の人生が良いか悪いかと、聞かれれば、さて、どうだろう。良いこともあれば悪いこともあった。人生何があるかわからない。
 私に出来ることは何か。そう考えた時、ああまず彼ならどうするだろうかと思った。彼なら、どうするだろう。
 愛する者を失ってもなお、私は私としていられたのは子供がいたからだ。愛する人との間の子供。私はなんとしてでも守りたかった。守らなくてはならないと思った 。ならどうする?私に出来ることは、守ること。子供も、奴らが手に入れようとしたものも…。

 ―――――時間の問題だった。

 "証拠"となるものを残しては不味い。だが、完全に消してしまうのも不味い。彼らになら安心して託せる。彼らならきっと…。
 迷っている時間はなかった。
 私は知識を駆使して、封じることにした。昔からあるそれは、使うにはやや危険なところもあるのだが、構ってられない。むしろ、その術…封印はこちらにとって都合がよかった。本人の意思…。信じるしかない。

 


「―――――何処にやった」



 朦朧とする意識の中、そんな問いになんと答えてやろうかと思う。どうせもみ消される"事実"だ。ならどんなことをしたところで、結果は同じだった。
 ――――すまない。
 子供に、友人に。
 いくらでも探せば心残りは出てくる。いくらでも、だ。それを諦めて出来ることをした私の役目はもう、終わったのだ。




「さあ…何処でしょう」

「そう言っていられるのも今のうちだな」

「さて、どうかな」

「何?」



 道連れ、にはならないだろう。だが、それでも傷にはなるだろう。それでいい。あとは―――――セラたちに任せて、私は…。

 眩い光に包まれたあと、私はすべてわからなくなった。
 これでいい、これで―――――。
 すべては、守るもののために。



 * * *





 ――――――不愉快な夢を見た。

 机に突っ伏して寝ていたらしい。固まった体を、ゆっくり伸ばしていく。
 処分は既にくだり、指定された部屋にて一人、黙々と仕事をするようになって、少し。謹慎ということもあるため、時折様子を見に来る神官らに言葉を返す。こうなる前と今と、大して変わりはない。


< 588 / 796 >

この作品をシェア

pagetop