身代わり王子にご用心

戸惑い




「あの……近くのスーパーに寄ってもらっても構いませんか?
あ、無理でしたら電車を使いますから。ここで下ろしていただいても」


再びリムジンに乗り込んだ時、図々しいかもと思いながら訊ねてみた。


高宮さんはどうでもいい、って言ったけど。助けたお礼にって約束、したんだから。ちゃんと作りたい。


「別に、構いませんけど。生鮮食品や冷凍食品は買いますか?」

「は、はい」


ミモザサラダに使う卵がちょうど切れていたし、キャベツも新鮮なものを使いたい。その他色んな食材を思い浮かべると、頷くしかない。


それなら、と桂木さんは言う。


「では、帰りの方がいいですよね? この車内にもクーラーボックスは備え付けてありますが、温度管理がなされた店頭に置いてあった方が鮮度が持ちますから」

「そう……ですね」


帰り? 今が帰りじゃないのと頭の中に大きな疑問符が浮かぶけど、たぶん彼は無駄なことをしてはいない。お任せすればいいかな……と黙って頷いた。


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